酵素の誤解を解く その4|酵素ダイエット
酵素栄養学のほかにもう一つ、酵素に関しての誤解があります。それが酵素ダイエット。
酵素断食の今昔
今はファスティングという言葉も一般に知られるようになりましたが、かつては断食とかファスティングというと「食べなきゃ死んでしまう」とびっくりされることがむしろ普通でした。修行に近いイメージがあったかと思います。
断食は宗教的行為に端を発しているようなので、まぁ当然かも知れません。その後、民間療法的に広がりをみせましたが、断食とひとくちに言っても、完全に何も口に入れない断食の他に、水やお茶を許容するもの、さらに一日一食などバリエーションがあります。
宗教的行為という背景や民間療法という広がり方だった断食と植物のみを原料とする酵素は親和性があったということは言えると思います。
当社は酵素やヨガの事業を始めて40数年になりますが、当初から断食はメニューにありましたし、ヨガスクールとは別に断食道場を設けていたほど。もちろんヨガと酵素も親和性が高いことがありますが、当時、酵素は断食とセットで語られることが多かったのです。
断食も酵素も一般的ではなく、今のように健康維持のためにということ以上に療法として酵素が求められたことがありました。いろいろ手を尽くしたが体調が戻らず、酵素断食に取り組むという方も少なくありませんでした。
断食中は食べないから痩せるのは当然です。また体調不良には食べすぎやそれによる肥満が要因となっていることも多いので酵素断食で痩せたいという方も出てきます。痩せるためには食べないのが手っ取り早いですが、健康にとってはリスクも伴う。そこで酵素を飲むことで一定のカロリーも摂りながらダイエットに取り組むという流れが出来てきました。
主に置き換えダイエットという呼ばれ方で、例えば朝食を抜いて、その代わりに酵素を飲むという方法。
飲んだだけで痩せる?
特殊な場合を除いて(摂取カロリー)ー(消費カロリー)の算数で答えがマイナスになれば痩せます。ウチの酵素でいえば100㎖で約250キロカロリーなので、今までの朝食がそれ以上のカロリーで他の食事や運動などの要件が変わらなければ痩せます。これは食事の代わりが酵素でなくても同じです。ただ、酵素は一定のカロリーがあるのと健康保持するものでもあるのでより相応しいということでしょう。
気をつけなくてはいけないのは「飲むだけで痩せる」という触れ込みです。多くは飲むことで代謝アップして(消費カロリーが大きくなって)痩せるというもの。これは科学的にエビデンスのあるものはないと思います。
例えば酵素を飲んで痩せようとする心掛けから食事の量が自然に減ったり、酵素を飲むことで満腹感が出て食事が減ったり、便秘の改善や長い目で見ると食事の好みに変化が出たりして結果として痩せた方もいます。実際、普通に食事をしながら酵素を飲み始めたら太るか、というとそういう方にはお目にかかったことはない。ただ、「飲むだけで痩せる」という言い方は正しくありません。
残念ながらそういう触れ込みで販売された方がいて、薬事法違反や食品表示法違反に問われ、業界全体がダメージを受ける事例もありました。
実際に僕のところにも「お宅の酵素は飲むと痩せますか?」というようなお問い合わせやOEMの打診があった時期があります。もちろんそういうオファーにはしっかり説明し、お断りするようにしていますが、話していると悪気はないというか、そういう効果があるものと信じてオファーをしてきている感じもありました。
一義的には業者側の問題ですが、消費者も見分ける知恵があるとよい。そういう関係性を築いていきたいと思います。
関連記事:酵素の誤解を解く その3|酵素栄養学の誤謬
酵素の誤解を解く その2|なぜ「酵素」と呼ばれる?
酵素の誤解を解く その1|生体内酵素と食品酵素
断食についてはこのほかにも幾つか記事を書いています。ブログ内検索で「断食」と入れて検索したら18件ヒットしました。良かったら気になったものを読んでみてください。
この記事の投稿者
福士宗光
父から継いだ酵素製造と、自身はヨガ素人ながらヨガスクール運営を行っているケルプ研究所2代目経営者。
健康は食生活や適宜の運動を通じて自分自身で築き上げるもの。酵素とヨガでお手伝いすることが使命と考えています。