酵素の誤解を解く その5|加熱の是非

 

 その他, 酵素

過去にも何度か関連した記事を書いていますが、酵素を加熱することについて。「酵素の誤解を解く」シリーズ その1~その4をお読みいただいていたらスッと入ってくる、というか既に言うまでもない内容のはず。

なぜ加熱の是非が問題になるのか

そもそもなぜ加熱の是非が酵素においてテーマになるのでしょうか。この問いに答えることが結論をお伝えすることになりますが、野菜や果物といった植物原料の発酵エキスである食品(清涼飲料)としての「酵素」がその名称からタンパク質である生体内の「酵素」と混同されていることが原因です。

清涼飲料としての「酵素」は、食品衛生法の規格基準で加熱殺菌が必要。また「生体内酵素」はタンパク質なので一定以上の加温により失活します。その3で問題を指摘した酵素栄養学(「酵素の誤解を解く その3|酵素栄養学の誤謬」)に則って考えるとそれは効果のないものになってしまう…という理屈です。

ただ、タンパク質はそもそもそのまま身体の中には入らない。失活してバラバラになってから吸収されます。

清涼飲料水を加熱する意味

本題から少し逸れますが、清涼飲料水の加熱殺菌はなぜ必要なのでしょうか。

まず、清涼飲料水とは何でしょうか?
一般にイメージされるのはジュースですが、法律では以下の通り。

乳酸菌飲料、乳及び乳製品を除く酒精分1容量パーセント未満を含有する飲料をいうものであること。従って、酸味を有しない飲料水、主として児童を対象として製造されコルク等で簡単に栓を施した飲料水(例えばニッケ水、ハッカ水等)、トマトジュース、摂取時に希釈、融解等により飲み物として摂取することを目的としたもの(例えば、濃厚ジュース、凍結ジュース等)(ただし、粉末ジュースを除く。)もすべて含まれるものであること。

食品衛生法に基づく通知(昭和32年9月18日厚発衛第413号の2)の第3の一(2)

昔の通知なので少し分かりにくいですが、経口摂取する液体で、乳酸菌飲料でなく、乳及び乳製品でなく、アルコールが1%以上含まれないものは全て清涼飲料水ということです。
この中でさらにミネラルウォーターや炭酸飲料等特別な規格基準があるものもありますが、多くのものが加熱殺菌を求められていて酵素もそれに該当するというわけです。

加熱殺菌は食品が腐敗(有害微生物が増殖)しないために行いますが、微生物が増殖するためには、水分活性、pH、栄養成分など様々な条件が必要です。詳しい説明はここでは省きますが、これらの条件の組み合わせによって微生物の増殖のしやすさ=食品の保存性が変わってきます。

実は弊社の作り方(糖浸透圧抽出法)の酵素は水分活性が低く、狙い通りに発酵するとpHも低くなって有害菌が増殖することは難しく、特別に菌を加えない限り腐敗することはまずありません。実際、かつて充填してから瓶ごと殺菌槽に入れて加熱する方法を取っていた頃は、自分たちで飲む分は加熱せずに飲んでいたほどです。

そういった加熱しないものは、液中の酵母が発酵して蓋を開けた時にポンッと音がしたり、泡を吹いたりすることもありました。そうすると「生きている!」というような話にもなりやすいんですね。

自分で自分の首を絞めることはやめよう

そういった状況と酵素栄養学が相まって、加熱すると酵素が失活するので効果がないという理屈としては意味のない話になってしまった。
復習ですが、タンパク質は経口摂取したのち身体に入る際にはそもそも失活し、アミノ酸になっている。(従って)酵素飲料の機能性はタンパク質としての酵素に依拠していないのです。

僕たちは自社の酵素の機能性を探るために、幾つかの実験を行っていますが、もちろんいずれも加熱殺菌済みの酵素を使っています。
有意に効果が見えても作用機序までは分からないことがほとんどなので説明はできない。こういう条件でこういうことを試したら、こういう結果が確認できたという事実のみ。

目先のマーケティングのために、定義としては曖昧な「生」とか、辻褄の合わない酵素活性を持ち出して語ることはお客様に対する誠実さを欠くとともに、結果として、自分たちの首を絞めることにもなると思うのです。

 この記事の投稿者

福士宗光

父から継いだ酵素製造と、自身はヨガ素人ながらヨガスクール運営を行っているケルプ研究所2代目経営者。

健康は食生活や適宜の運動を通じて自分自身で築き上げるもの。酵素とヨガでお手伝いすることが使命と考えています。

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