社風と業績
僕が23~24歳の頃、今から35年以上前の話です。
大学卒業後、都市銀行に就職した僕は一カ月ほどの集合研修を終えたのち東京都心部のとある支店に配属となりました。窓口の後方業務、外国為替、融資とジョブローテーションが組まれたOJTの後、いわゆる外回りに出る。
この支店は歴史があって長く集配金などの単純サービス業務を行っている取引先も多かった。効率は良くなくても取引ボリュームがあると折り合いはつくし、そういった取引先は新人外回りの登竜門のようになっていました。
重要な先柄だが、新人が担う業務そのものは単純で難しくはない。先方がしっかりしているので大きなミスも起こりにくい。本体(会社)取引は本部の専門部署が担当し、新人外回りは職域と言われるその会社の役職員の個人取引や日々の入出金の業務を請け負うという先もありました。
そんな中の一社に音楽関係の会社があった。ここは午前、午後一日2回訪問するという親密先。メインバンクだったし、一日2回も社内を歩いていると社員の方から「おーい、三井さん、これ入金しておいてー」と現金と通帳を渡されるようなこともあった。役員秘書の方々と飲みに行ったりもしたし親しい関係性がありました。
ある日、総務系の役員の方から呼び出しがあり、役員室にいったところ、こっぴどく叱られた。
一時間近く、少なくとも30分以上はお話を聞いた気がするし、かなり真剣に叱られました。詳細は覚えていませんが勘定にからむ事務ミスではなくて僕の仕事に対する姿勢のようなものだったと思う。
なんでこんな昔のことを印象深く覚えているかというと、仕事上、上司に叱られるというか、厳しい指導を受けることは多々ありましたが、お取引先から指導を受けるということはあまりなかったからです。なんというのだろう、ちゃんと叱ってくださったのでした。
「入社何年目とか役職とかは関係ない。君は銀行を代表してウチの会社を担当しているのだ」という主旨のことを言われたと記憶しています。
社風と業績には関係性がある
このお会社は、業種柄もあるかも知れませんが、いつも雑談があるようなフランクな雰囲気があり、若い人たちが力を発揮しやすい環境でもあった気がします。実際若い人を尊重するというか、年代に関わらず責任を担っていた部門も多かったようにみえました。
会社を構成する要素には、人、モノ、カネ、情報があると言われますが、やはり中心は人だと思う。年代に関わらす認め合い、敬意を払うのは人の成長、ひいては会社の成長のために大切ですよね。
一年ほど担当したのちに融資課に移ることになり、担当としての最終日、夕方、経理ご担当から書類を預かり銀行に戻ろうとすると「みんな集まれー」みたいな感じになって花束と「全員分じゃないけど‥」って寄せ書きの色紙をくださいました。
件の役員の方もわざわざフロアに降りてきて遠くから拍手をしてくださっていた。経理総務のメンバーだけで30~40人はいたと思う。皆さんの拍手にこみあげてくるものがあって「ありがとうございました」の一言しか言えなかった。
メインバンクで親密先とはいえ外部の僕にまでそんなマインドで接してくださったと思うと素晴らしいなと思うのです(それとも当時の課長が学生気分の抜けない僕のために頼んでくれたのだろうか…?笑)。
同時期に、別の、業績に大きな問題を抱えその後倒産した某上場企業にお邪魔したことがあり、ゆったりと新聞を読んでる偉そうな人にお茶が出されていて、誰も会話を交わさず黙って机に向かっていたのとのギャップがすごかった。
フランクで自由闊達というのと、ガバナンスが緩んでいるというのは、表面上似ている部分もなくはないけど、全く異質。入行二年目だった僕でも会社に入っただけで空気で分かる。
時々思い起こして、僕の会社は、今、大丈夫だろうか、と顧みるスタンダードの一つです。
この記事の投稿者
福士宗光
父から継いだ酵素製造と、自身はヨガ素人ながらヨガスクール運営を行っているケルプ研究所2代目経営者。
健康は食生活や適宜の運動を通じて自分自身で築き上げるもの。酵素とヨガでお手伝いすることが使命と考えています。