その時経営者が命がけでやるべきこと|中小企業家同友会 全研 から
震災復興シンポジウム
先日、ブログに書いた中小企業家同友会の全研。
2日目の全体会のなかで行われた震災復興シンポジウムが印象深かったので残しておこうと思います。
全研についてはこちら ⇒ 「同友会の全研に参加してきました」
パネリストは兵庫同友会 ジャバラ製品のメーカ―である日本ジャバラ株式会社田中社長と福島県同友会 福島県内に食品スーパーフレスコキクチを展開する株式会社キクチ菊地会長のお二人。コーディネーターは関西学院大学の佐竹教授。
テーマは「その時経営者が命がけでやるべきこと」~地域あっての中小企業、中小企業あっての地域~
阪神・淡路大震災から23年。今年の全研の開催地、兵庫県同友会の会員の8割は震災後に入会したメンバーだそうです。
南海トラフのリスクも一時メディアを賑わせながら、あまりにも大きな問題すぎてリスクを過小評価しがちになる、冒頭そんなお話がありました。
忘れない、語り継ぐことがまずは大切
震災という想像を絶する経験を、実際に体験していないものが同じように共有するのは正直難しいとは思います。ただ、菊地会長からは東日本大震災が起こったとき、同友会の中で伝えられた阪神・淡路大震災での経験が役立ったというお話がありました。
端的な例は当座の資金の確保。
震災のような先の見えない大きな変化が起こったとき、従業員の生活を守り、復興の力となってもらう、復旧の際の自助努力のもととして資金を確保することはメンバーの安否に次いで重要だったという。福島では伝えられた経験をもとに借り入れのある会社は約定返済をストップしたり、取り敢えず使途がなくても枠一杯借り入れたりして、資金確保の手立てをとったそうです。
これは金融機関との普段からのコミュニケーション、経営指針の公開など、会社の実情を少なくともメインバンクに分かってもらっておく必要があるということも大きな教訓。
また、震災直後、なぜそのような経営判断ができたのか、というコーディネーターの問いに対して、両社とも、迷いはなかったという答えでした。究極の状況になったとき、やるべきことはむしろシンプルに見えてきたということ。
印象的だったのは、迷いなく行った経営判断や取り組みは、それぞれの企業の成り立ちや風土に重なるものだったこと。
企業の成り立ちや在り方、地域との関わり
日本ジャバラの取引先は首都圏の大企業。他にも類似の製品を供給するライバルは多数あって、震災があってもビジネスのスピードを落とすことは取引を失うことを意味していました。むしろ取引先の不安を解消するためにも震災前に戻すのではなく、更に新製品を開発したり、というチャレンジングな経営判断をされていました。
一方のフレスコキクチは地域密着の食品スーパー。例えば震災前複数店舗営業していたある地区では、地域シェアが50%を超えていた。つまりフレスコキクチがなければ地域住民は食料の入手に困る、そういう環境。
菊池会長は震災前から店舗に地震保険をかけ始めていた。年額2000万円の保険料。年数が経つと保険料が少しずつ下がる。そのたびに保険をかける店舗を少しずつ増やしていく。震災前の2011年2月、すべての店舗に保険を掛け終えていたという。地域の存亡にもかかわる食料供給を担うフレスコキクチ。リスク管理こそが経営という言葉もありました。
両社ともゴーイングコンサーンを重視していることは同じでも、2社の成り立ち、地域での立ち位置によって取り組みは違ってくる。それがしっかりと経営理念やビジョンに反映されていて会社全体に浸透している両社だったからこそしっかりと対応できたのだろうと感じました。
菊地会長は3月8日、札幌で報告者として登壇されます。⇒ 北海道中小企業家同友会 札幌支部3月例会
この記事の投稿者
福士宗光
父から継いだ酵素製造と、自身はヨガ素人ながらヨガスクール運営を行っているケルプ研究所2代目経営者。
健康は食生活や適宜の運動を通じて自分自身で築き上げるもの。酵素とヨガでお手伝いすることが使命と考えています。