なぜ「酵素」と呼ばれるのか
当社の主力製品は「酵素」と呼ばれるいわゆる健康飲料。創業以来、ほぼ1つの製品を作り続けている会社です。
酵素飲料は、業界としては、植物エキス発酵飲料というのが正式な呼び名。
この、植物のエキスを発酵・熟成させた日本の伝統的な健康飲料が、数年前からブームのようになって、かつては「酵素ってなに?」と言われていたのが、他の健康食品に「酵素入り」みたいにPRの要素として使われるようにすらなっています。隔世の感ありです。
「酵素」の由来
各メーカーのWEBサイトをみると、それぞれに歴史が語られているものもありますが、個々の製品の歴史から少し離れて考えますと、酵素飲料の原形は、樹木の洞などに保存した果実や野草が自然発酵したものが傷や病気に効いたという民間伝承だとされています。
また「酵素」という言葉が使われるのは神道系創唱宗教である大本の出口王仁三郎師が蒙古(モンゴル)を訪れた折、道端の草を口に噛み「これが酵素だ。これから酵素の時代になる」と言ってその汁で怪我をした従者の傷を癒したということが元になったと伝えられています。
これらのことが酵素という呼び名のもとになっている。そして製造で発酵という過程を通ることから、違和感なく使われてきた。
私は知る限りの情報からそのように考えています。
業界としては、生体内酵素との混同を避けるために植物エキス発酵飲料という、製造方法に沿った呼び名を決めたものの、お客様には通じなくて「酵素」と呼ばれ続けている。
言ってみると食品としての「酵素」には明確な定義はなく、植物性の原料を発酵技術を用いて製品化したものに広く使われています。
ただ、現在のブームともいえる状況以前には、日本全国で数社しか作っていなかったものなので、古くから製造しているメーカーには、現状の「酵素入り」には、やや違和感を感じている人も多いと思うのです。
YouTubeで製造工場の様子をご覧いただけます(音がでます)
「酵素」は、二つの意味で使われてしまっている
生化学でいうところの酵素(=タンパク質であり生体内で様々な化学反応に触媒として機能しているもの)と健康食品でいうところの酵素(=健康飲料などで野菜や果物のエキスを発酵・熟成させたもの)が両方の意味で使われています。
ウィキペディアで見てみると、
酵素は生物が物質を消化する段階から吸収・分布・代謝・排泄に至るまでのあらゆる過程(ADME)に関与しており、生体が物質を変化させて利用するのに欠かせない。したがって、酵素は生化学研究における一大分野であり、早い段階から研究対象になっている。
多くの酵素は生体内で作り出されるタンパク質を基にして構成されている。したがって、生体内での生成や分布の特性、熱や pH によって変性して活性を失う(失活)といった特性などは、他のタンパク質と同様である。
生体を機関に例えると、核酸塩基配列が表すゲノムが設計図に相当するのに対して、生体内における酵素は組立て工具に相当する。酵素の特徴である作用する物質(基質)をえり好みする性質(基質特異性)と目的の反応だけを進行させる性質(反応選択性)などによって、生命維持に必要なさまざまな化学変化を起こさせるのである。
古来から人類は発酵という形で酵素を利用してきた。今日では、酵素の利用は食品製造だけにとどまらず、化学工業製品の製造や日用品の機能向上など、広い分野に応用されている。医療においても、酵素量を検査して診断したり、酵素作用を調節する治療薬を用いるなど、酵素が深く関っている。
(Wikipedia 酵素ページ「概要」より引用)
このように、生体内酵素はすべての生物のなかにあって、生命活動の中心を担っているといってもよいもの。
酵素飲料の原料になる野菜や果物にも、発酵に関与する微生物の中にも存在しています。
そのことが「酵素栄養学」(ご参考:「酵素栄養学では語れない」)という考え方と相まって、生体内酵素と酵素飲料の混同を招いている。
植物エキス発酵飲料が「酵素」と呼ばれること、是非もないのですが、混同を助長しないように留意したいと思っています。
この記事の投稿者
福士宗光
父から継いだ酵素製造と、自身はヨガ素人ながらヨガスクール運営を行っているケルプ研究所2代目経営者。
健康は食生活や適宜の運動を通じて自分自身で築き上げるもの。酵素とヨガでお手伝いすることが使命と考えています。